ねじのゆるみ(回転ゆるみ)
ねじ締結体(ボルト・ナット)におけるゆるみには、回転ゆるみがあります。その種類としては、①軸回り方向繰返し外力によるゆるみ、②軸方向繰返し外力によるゆるみ、③軸直角方向繰返し外力によるゆるみがあります。
詳細は、ダウンロード資料「ねじ締結体のトラブル 原因と対策-回転ゆるみ編-」をご確認ください。
このコンテンツでは簡単にご紹介します。
(1)軸回り方向繰返し外力によるゆるみ
軸回りに繰返し外力が加わると、ボルト軸線回りのモーメントが被締結部材に作用し、まず被締結部材同士の接触部が滑り、その滑りが存在する状態でナット又はボルト頭部座面でも滑りが生じる場合があり、これによりナットまたはボルトが戻り回転し、軸力の低下つまりゆるみが生じる現象となります。
(2)軸方向繰返し外力によるゆるみ
ボルト軸に外力が加わると、ねじ山に角度があるためナットはボルト軸力の半径方向分力の作用で拡大し、ボルトのねじ部は半径方向に収縮します。一方、外力が減少する時は、その反対の現象が起こります。そのため、外力の増減に際して、ボルトねじ山の下面はナットねじ山の上面を半径方向に上り下りしますが、ねじにリードがあるため下るときも上るときもリードに沿って下る成分を持ちます。その結果、ボルトねじ部は外力増減の1サイクルにつきねじ先付近で測ってθsだけナットに相対的に上から見て右回りに回転します(図1)。それと同時にナットに半径方向の拡大収縮が起こってナット座面は被締結部材の表面上を半径方向に滑りますが、そのとき発生している軸トルクの影響を受けて、拡大するときも縮小するときも、被締結部材に対し1サイクルにつきθnだけ上から見て左回りに戻り回転します。θs>θnまたはθs=θnの場合はゆるみませんが、θs<θnの場合はナットが戻り回転し、ゆるみます。一般的に、初期軸力の2倍以上外力が繰返し加わると、軸力低下(ねじがゆるむ)といわれています。
(3)軸直角方向繰返し外力によるゆるみ
ボルト軸線に直角方向の繰返し外力が被締結部材に作用するか、被締結部材にボルト軸の直角方向に繰返し外力が作用すると、ボルト軸部が左傾→中立点→右傾→中立点→左傾と左右に荷重がかかります。この両区間中に起きるボルト軸部の姿勢変化に伴い、ボルトねじ山の下面がナットねじ山の上面を滑ります。その滑り方向は、ナットねじ面上を上り下りする成分のほか、ねじのリードに沿って下る方向の成分も持つので、ボルト軸部は上から見て右回りの弾性ねじれを生じたり、弾性ねじれを解消しようとする円周方向の成分も持つので、上から見て左回りの戻り回転を生じます。この繰返しサイクルがねじのゆるみを進行させていくことになります。
参考文献
(1) 山本 晃:ねじ締結の原理と設計,養賢堂(1995)p. 128,▶書籍はこちらから
(2)同上,p. 121,▶書籍はこちらから