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ねじ締結体の疲労強度(軸直角方向外力の場合)

2022.04.18

ねじ締結体の軸直角方向外力による疲労

ボルト・ナットを使用したねじ締結体では、被締結体に外部から軸方向あるいは軸直角方向に外力が繰返し作用すると疲労現象が起こって最終的にボルトの疲労破壊が起こることがあります。疲労破壊は降伏応力や耐力といった塑性変形が起こらないようなかなり小さな繰返し応力でも発生するため、安全面・品質面から注意が必要です。ここでは、軸直角方向外力によるボルトの疲労破壊について考えてみたいと思います。

図1にねじ締結体(ボルト・ナット締結体)を図示しました。ここではボルト軸に対して軸直角方向の外力が被締結体に繰返し加わる状態を想定してみます。

図1は、適正な軸力で被締結体1および被締結体2をボルトとナットで挟み込んで固定するために締め付けた状態です。繰返し外力が被締結体にかかる主な加わり方として、(A)被締結体1のみに外力が加わる場合、(B)被締結体2のみに外力が加わる場合、(C)被締結体1および2のどちらにも外力が互いに逆方向の向きで加わる場合などが考えられます。ただし、実際には被締結体1および2のどちらにも外力が加わる場合では、外力の位相差が中間的な状態であることもあり得ます。図1では外力を両振りにしていますが、片振りの場合もあります。

図1.ねじ締結体と軸直角方向繰返し外力の主な状態

 

ねじ締結体における軸直角方向に外力が繰返し加わる場合のボルト疲労破壊現象は、現在まで検討事例が殆どありません。しかし、実際の使用現場では発生事例の懸念が多々有るようです。外力がボルト軸方向に加わる場合のボルト疲労破壊現象については過去からの検討・解析事例も数多くあり、次に示す▶ 金属の損傷(ねじ締結体の疲労強度技術情報コンテンツでも紹介しています。外力がボルト軸直角方向に加わる場合のボルトの疲労破壊の検討は、特に実用上の観点から非常に重要と思われます。今回のコンテンツでは、ねじ締結体で起こり得る可能性のある疲労現象を考察したものです。今後は実験的に軸直角方向繰返し外力の疲労試験と検証を行う予定にしています。

ねじ締結体のすべり

ねじ締結体でボルトに軸力が負荷された場合、軸直角方向の外力を支える主な接触面として被締結体1と被締結体2両者の界面、ナット座面、ボルト頭部座面があります。これらの各接触面における摩擦力は垂直抗力に相当する軸力と静止摩擦係数を乗じた値になりますが、外力がこの摩擦力よりも大きくなると接触面ですべりが起こることになります。すなわち、初期軸力が維持されている間は接触面ですべりが起こらなくても、ねじのゆるみ等によって軸力が低下すると摩擦力も低くなって外力以下に低下して接触面ですべりが発生することになります。

ねじの回転ゆるみに関して、軸直角方向繰返しせん断荷重が作用すると基本的に回転ゆるみが発生することが知られています。ねじ締結体に軸直角方向繰返し外力が作用するといずれは軸力が低下して各界面ですべりが発生することに繋がると考えられます。

図2は疲労に関わる主な条件とねじ締結体の接触面ですべりが発生した場合の被締結体の代表的な位置関係を表したものです。外力に関する条件については、外力がどの被締結体に加わるのか、外力の大きさと平均応力の大きさ、繰返し外力の周波数などがあげられます。接触面でのすべりに関しては、各界面における摩擦係数の大きさが重要な条件としてあげられます。なお、摩擦係数は外力の繰返しで変化していく可能性もあります。図中の(a)は初期状態として摩擦接合を表したものです。被締結体1に外力が加わって接触面がすべり、ボルト軸に接した状態が(b)、同様に被締結体2に外力が加わって接触面がすべり、ボルト軸に接した状態が(c)です。(d)は被締結体1と2の両者が外力によってすべり、ボルト軸に接した状態を表しています。被締結体が繰返し外力によってすべりますといろいろなパターンでボルト軸直角方向に外力が繰返し加わることになると考えられます。すなわち、被締結体でボルト軸直角方向に外力が繰返し加わる場合は種々の条件によってボルトの疲労発生個所が異なることが想定されます。

図2.疲労に関わる条件と被締結体の代表的な位置関係

 

推定されるボルトの疲労発生箇所

ボルトの疲労発生箇所について考えてみます。

ボルトの疲労発生箇所に影響する要因は、外力がどの被締結体に加わるかの外力の作用位置、および各界面ですべりが発生するか、あるいはすべらないで固着のままかどちらの状態であるのかが大きく影響します。また、繰返し外力の振動周波数と被締結体のすべりによる移動距離の関係で繰返し外力が被締結体に作用しても被締結体がボルト軸に接触せずに結果として疲労が起こらない可能性もあります。ここでは被締結体(上面、下面)が外力によってすべると被締結体がボルト軸に接して外力がボルトに伝わるという前提条件で考えてみます。

表1は被締結体1のみに外力が作用する場合に各界面がすべるか固着の状態かで場合分けし、推定される疲労発生箇所と疲労の種類を示したものです。ここでは、簡単化のために構造体を剛体として考えてみます。被締結体界面、ナット座面、ボルト頭部座面のいずれもすべる場合は被締結体1と2の界面付近位置でボルト軸のせん断疲労が発生すると考えられます。実際にはこの条件になるケースが多いかも知れません。ナット座面が固着状態の場合は、外力がナットを介してボルトに伝わります。ボルト軸に伝わるせん断力は剛体ですので軸全体の位置に作用することになりますが、ねじ部が疲労に最も弱いと考えられますので、ねじ部の中で特にナットとボルトが繰返し直接接触するナット座面位置付近を代表的に疲労破壊発生箇所にしました。ナット座面がすべり、ボルト頭部座面が固着の場合は、被締結体2のボルト孔とボルト軸との間にクリアランスがある状態で被締結体1から外力が作用します。被締結体2側のボルト軸のせん断疲労破壊は通常切欠き係数が最も高い箇所で発生します。全ねじのようにねじ部があればその部分のいずれかの箇所で、平滑な軸部であればボルト頭部首下側の疲労破壊になる可能性があります。

 

なお、表1に記載はしていませんが、外力の作用位置が被締結体2のみの場合、あるいは外力の作用位置が被締結体1と2の両者の場合も、ボルト軸のせん断疲労、ナット座面位置のボルトせん断疲労、ボルト頭部首下のせん断疲労のいずれかになると想定されます。

軸力低下によって界面がすべる条件下になると被締結体界面、ナット座面、ボルト頭部座面のすべてですべり始めます。そのため被締結体界面付近でのボルト軸のせん断疲労が起こる可能性が最も高いかも知れませんが、腐食、焼付き、あるいは人為的な要因等によって一部の界面が固着状態のままである可能性も考えられます。一方、構造体を剛体として考えましたが実際の構造体は弾性体です。したがって、せん断応力だけではなく曲げ応力も発生し、曲げ疲労についても考慮することが必要と思われます。

図3に、ねじ締結体でボルト軸直角方向に外力が繰返し加わる場合にボルト軸に発生する可能性のある主な疲労箇所と疲労の種類を示しました。

図3.ボルトに軸直角方向外力が加わった場合に想定される疲労発生箇所

 

ボルト各部位の疲労強度

疲労強度設計では、該当部位についてS-N曲線による疲労強度と実際の負荷応力の関係でもって検討されます。ここでは、軸直角方向外力によるボルトの疲労発生箇所の疲労強度についてそのS-N曲線を推定してみます。

図4に、ボルト軸(平滑部)のせん断疲労と曲げ疲労のS-N曲線を示しました。材料の種類によって疲労強度は異なりますので、ここでは引張強さを基準にして応力振幅(疲労強度)を表しました。図では縦軸(応力振幅)の最大値を引張強さ(1.0σB)としています。鋼材では一般的に丸棒平滑材のねじりせん断疲労限度が引張強さの0.3倍程度、曲げ疲労限度が引張強さの0.45倍程度であることを勘案してS-N曲線を推定しています。

図4.ボルト軸(平滑部)のせん断疲労および曲げ疲労の推定S-N曲線

 

ボルト軸が全ねじのように円筒部を持たないでねじ部だけの場合もあります。図5に、ボルト軸(ねじ部)のせん断疲労と曲げ疲労の推定S-N曲線を示しました。図5では縦軸(応力振幅)の最大値を引張強さの0.25倍(0.25σB)としています。鋼材のねじ部の切欠き係数について一般的に過去からの検討事例が多くありますが、ここではねじりせん断疲労の切欠き係数を3に設定し、曲げ疲労の切欠き係数を4に設定しました。また、S-N曲線における傾斜部の傾きについては、弊社にて実測したボルトの疲労試験結果に基づいてねじ部のS-N曲線の傾きを平滑部よりも急にして表しています。

 

図5.ボルト(ねじ部)のせん断疲労および曲げ疲労の推定S-N曲線

 

図6に、ボルト頭部首下のせん断疲労と曲げ疲労の推定S-N曲線を示しました。図6では、縦軸(応力振幅)の最大値を引張強さの0.33倍(0.33σB)としています。鋼材のボルト頭部首下の切欠き係数についてここでは、ねじりせん断疲労の切欠き係数を2.25に設定し、曲げ疲労の切欠き係数を3に設定しました。

図6.ボルト頭部首下のせん断疲労および曲げ疲労の推定S-N曲線

 

軸直角方向外力に対する疲労破壊対策

ねじ締結体(ボルト・ナット締結体)において締結状態では被締結体界面、ナット座面、ボルト頭部座面に軸力による摩擦力が作用しています。被締結体に軸直角方向繰返し外力が作用した場合、各界面での摩擦力が外力よりも大きくて界面がすべらなければボルトの疲労は発生しません。ただし、被締結体側の疲労の問題としてボルト孔の疲労現象(この場合、フレッティング疲労となる)については別途考慮しておく必要があります。

軸力が低下していずれかの界面ですべりが発生し、その後に被締結体ボルト孔の側面がボルト軸に接する状態になりますと、ボルトに軸直角方向に繰返し外力が作用する状態が生じて疲労現象が起こります。すなわち、ボルト・ナットが緩みますと軸直角方向繰返し外力によってボルトの疲労破壊が発生する可能性があります。ボルト・ナットが緩んだ場合に軸直角方向外力によって疲労破壊するかどうかの判断は、外力の大きさを元にボルト各部位にかかる実働負荷応力をFEM解析等で評価し、一方ボルト各部位のS-N曲線を求めることで検討することができます。なお、転造ボルトは切削ボルトより疲労限度が1.6~2倍程度向上することが一般的に知られており、同一鋼材でも転造ボルトの使用は疲労対策に有利です。

ボルト・ナット締結体を軸直角方向の繰返し外力が作用する環境で使用する場合、初期軸力を適切に加えて設計上安全な状態であっても、種々の要因でボルト・ナットが緩んで軸力が低下してしまうことがあります。繰返し外力が軸方向の場合に軸力の低下がボルトの疲労破壊に繋がることはよく知られていますが、ボルトに軸直角方向の外力が繰返し作用する場合も軸力の低下によって疲労破壊に至る可能性が高まります。すなわち、繰返し外力が軸方向あるいは軸直角方向のいずれであってもボルト・ナットの緩みがボルトの疲労破壊の原因になります。ナットの緩み止め対策は、特に振動がかかる使用環境下ではボルトの疲労破壊を未然防止するうえで必須であるといえます。

ハードロックナットは軸方向繰り返し荷重による戻り止め機能検証試験、ならびに軸直角方向繰り返し荷重による戻り回転測定試験において、ダブルナットと同等の戻り止め機能を有することを一般財団法人日本建築センターから評定されています。➡ 日本建築センター様 BCJ評定書

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