ねじ部品は様々な種類があります。今回は、一般的に使用される六角ナットを上下に2個使いすることでゆるみ止め効果を期待したダブルナットをご紹介します。
特徴
ナットの回転ゆるみ(ナットが戻り回転して生じるゆるみ)を防止する機能がある。但し、不完全な締付けではゆるみ止め効果が殆どなく正しい締付けを行う必要がある。この正しい締付けを実現することが現場では作業性が悪く殆ど困難である。
- ナットの非回転ゆるみ(ナットが回転しないで生じるゆるみ)に対しては無力である。[1]引用
- 上下二つのナットによるロッキングが十分でない場合には緩み止めの効果はないようである。[2]引用
詳細については、実際に各種締付け条件を設定して評価した結果を「ねじ締結技術ナビ」お役立ち資料として公開している下記のリンクよりご確認頂ければ幸いです。
▶ 「ねじ締結体のトラブル 原因と対策 ―ダブルナット編―」
誤った不完全な締付け方法と正しい締付け方法
ナットの回転ゆるみに対しては、大きな回転抵抗トルクの発生が必要である。そのためには、羽交い締め(ロッキング操作)を用いた正しい締付け方法を行う必要があります。(図1)に不完全な締付け方法を記載します。

図1 不完全な締付け方法
ポイントは、一方の六角ナットを回り止めの状態(固定)にしないで、もう一方の六角ナットを締付けることです。この方法では、適切な軸力を確保することもゆるみ止め効果を期待することもできません。
次に、(図2)に正しい締付け方法(下ナット逆転法の場合)を記載します。

図2 正しい締付け方法(下ナット逆転法の場合)
ポイントは、一方の六角ナットを回り止めの状態(固定)にした上で、もう一方の六角ナットを戻し方向へ締付けることです(した。この方法では、適切な規定トルクと適切なロッキング操作ができればゆるみ止め効果を期待することができます。
羽交い絞めによるロッキング操作の種類
羽交い絞め(ロッキング操作)を用いた締付け方法は2種類あります。
1つは上ナット正転法、もう1つは下ナット逆転法です。
どちらも一方のナットを回り止めした上で、もう一方のナットを締付け方向又は戻し方向に回転させてロッキングする方法で、サイズや材質により使い分けます。
<上ナット正転法>
下ナットをスパナで回り止めし、上ナットを他のスパナで締付け方向に回転させてロッキングする方法。(図3)

図3 上ナット正転法の締付け方法
<下ナット逆転法>
上ナットをスパナで回り止めし下ナットを他のスパナで戻し方向に回転させてロッキングする方法で、国内では一般的に推奨されている方法。(図4)

図4 下ナット逆転法の締付け方法
引用・参考文献
[1]酒井智次:増補ねじ締結概論,養賢堂(2003), p.135-136
[2]山本 晃:ねじ締結の原理と設計,養賢堂(1995), p.135-138