ゆるみの原理について(発展編)

2020.09.25

ゆるみの分類

一般に「ねじがゆるんだ状態」とはどのような状態を言うのでしょうか。

ねじの業界ではボルト軸力が、締付け時の軸力よりも減少することを「ねじがゆるんだ」と言います。

ねじのゆるみは大きく分類して2種類に分類できます。おねじとめねじが相対的にゆるみ方向へ回転することによって生じるゆるみ「回転ゆるみ」と、それらが相対的に回転していなくても生じるゆるみ「非回転ゆるみ」です。

図.1に、ねじのゆるみ分類の一例を示します。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

図.1 ねじのゆるみの分類

 

ねじのゆるみ原理

ねじのゆるみ原理の研究は様々な研究者により行われています。
しかし、それらは依然として統一された見解が無く、未だに完全に解明されているとは言いにくい部分があります。

ねじは我々の生活において数多く用いられています。
しかし、ねじがゆるんでほしくない時にゆるむと生活に支障をきたすだけでなく大事故にも繋がりかねません。ねじがゆるんでほしくない時にはゆるまず、ゆるませたいときにはゆるむ事が重要であり、ねじのゆるみとゆるみ止めの研究は急務とされています。

この記事では先の図に示すように分類されたゆるみに関して概要を示します。

 

回転ゆるみ

回転ゆるみはおねじとめねじか相対的にゆるみ方向へ回転することによって生じるとされています。

それは、ねじが「らせん形状」をしていることが主に影響しているとされています。

従来の研究により、ボルト軸直角方向の繰返し荷重を受けた締結体が最も回転ゆるみが生じることが明らかにされています。

 

このことから 上図⒜の繰返し荷重のうちボルト軸直角方向に関してのゆるみを例にとって説明します。

 

下左図はボルト締結体のモデル、下右図はボルト締結体モデルがボルト軸直角方向繰返し荷重を受けた際のボルト軸力低下の様子を示します。

 

 

ボルト初期締付け力Ffで締め付けられたボルト締結体にボルト軸直角の繰返し荷重が作用すると、初期に大きく軸力は低下し、その後なだらかに軸力は低下していきます。

初期に大きく軸力が低下している区間は、「回転ゆるみ」と「非回転ゆるみ」が同時に生じており、その後の軸力低下は「回転ゆるみ」が支配的だと言われています。

 

このように回転ゆるみはボルト軸力に常に影響しています。また、初期締付け力を大きくした方が回転ゆるみは生じ難くなると言われています。

このことからねじ・ボルトの設計についての記事(ねじ・ボルトの設計)のように、ミ-ゼスの相当応力がボルトの降伏応力(耐力)の90%以下に出来るだけ大きくとることをVDI 2230は示しています。

 

回転ゆるみの発生メカニズムについて、もう少し詳しく見てみましょう。

ボルトが繰返し荷重を受けると、ねじ部の圧縮応力は変動します。この際、ねじの形状がらせん状であることから、ねじはボルト中心軸に対して左右で、らせんの斜面を登る側と降る側に分かれます。

このとき登り側のすべり抵抗(摩擦力)の方が降り側より大きいため、ねじにゆるみ方向の回転力が生じ、結果として回転ゆるみが生じるとされています。

非回転ゆるみ

被締結物やボルト・ナットの塑性変形などにより弾性域での反発力が失われ、結果としてボルト軸力が下がる場合があります。これが非回転ゆるみです。

これらが生じる原因としては、図.1で示したように、なじみ・へたりやクリープ・接触面の摩耗などが原因として考えられます。また、塑性変形がしないまでも熱膨張係数の差によりボルト・ナットが回転しなくてもボルト軸力が減少することもあります。下図は被締結体が塑性変形(陥没)した様子を示しています。

なじみ・へたり量、ボルトや被締結体の塑性変形量、クリープ・摩耗量、ボルト・被締結体の熱膨張量の差をまとめてfZとしボルト軸力の低下量をFZとすると、ボルトのばね定数Kc及び被締結体のばね定数Ktをもちいて以下の式が与えられます。

非回転ゆるみのメカニズムはボルト・ナット及び被締結体の塑性変形であると示されてはいますが、実際の解析にはfZの測定やKc・Ktの推定方法などの問題もあります。

この式はVDI2230にも示されていますが、さらなる詳細な研究も必要だと考えられます。

 

 

参考文献

VDI 2230 Blatt 1(1986)『 高強度ねじ締結の体系的計算法-円筒状一本ボルト締結-』,日本ねじ研究協会,丸山一男 賀勢晋司 澤俊行

両角由貴夫,奥村雅彦,澤俊行,桑木健吾,『フランジ付き六角ボルト締結体の座面応力分布の弾塑性有限要素応力解析と永久変形量推定(初期締付け時の場合)』日本機械学会論文集A偏,第76巻第772号,p1603~1611

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