締結用部品は様々な種類があります。今回は、ばね作用を利用したゆるみ止め効果が期待できる座金類(ばね座金、皿ばね座金)についてご紹介します。
座金(washer)とは
JIS B 0101では、座金の定義はボルト、ナットなどの座面と締付け部との間に入れる部品であり、形状、機能、用途などによっていろいろな種類があるとされています。
座金の機能
- 座面機能(座面の保護、座面面圧の均一化、座面摩擦係数の安定化)
- スペーサ機能(なじみやへたりといった陥没の抑制やクリープ現象の緩和による軸力低下量の低減および座面すべり量の改善)
座金の種類や材質は多種多様です。上記2つの機能以外では、
- ばね機能(なじみやへたりによる軸力低下をばねの力で補填)
が一部の座金で期待できます。座金の種類や材質は多種にわたり、それぞれ期待する効果が異なるため、使用する場所や用途に合ったものを使用することが重要です。以下に、ばね座金と皿ばね座金のゆるみ防止の点に着目して説明します。
ばね座金(spring lock washer)
ばね座金はJIS B 1251にて規格化されています。(図1)の右側がばね座金ですが、見た目は平座金の一部が切断されて段差のあるねじれた形状となっており、ばね効果を有するような材質で製造されています。
ばね座金はナット座面と被締結部材の間に入れることで、ばねの反力により、締付けの際に発生する接合面同士のなじみ・へたりによる軸力低下を補填すると同時に、ばね座金の切断部分がボルト・ナットの座面と被締結部材に食い込むことで、座面部の接触抵抗を増加させ、戻り回転防止効果が高まると考えられています。しかし、ばね効果が生じるためには通常は密着荷重未満で使用される場合に限り、ばねが密着した状態ではばね反力は喪失するため、先に示した効果は期待できません。
実際、多くの現場でばね座金を密着するまで締付けていることを考えれば、なじみ・へたりによる軸力低下を補填する機能や、戻り回転を防止する機能がほとんど働いていないと考えられます。一方、ばね座金を密着させずに使用している場合、あるいは何らかの理由でばね効果が機能するようになった場合、ばね座金の反力がボルトの軸力の一部を補填することになり、平座金と比べればゆるみ止め効果が期待できますが限定的です。
なお、ばね座金自体がボルト・ナットの座面や被締結部材の表面を傷つけることで変形しているため、繰返し使用する箇所ではかえってねじのゆるみを誘発する恐れがあるので再使用時は注意が必要です。
皿ばね座金(conical spring washer)
(図2)の右側が皿ばね座金です。皿ばね座金は、皿ばねのばね作用を座金として活用しようとしたものです。皿ばねに対しては用途や特徴が異なるため注意が必要です。
JIS B 2706で規定されている皿ばねの主な役割は、ばねの反力を利用し、なじみ・へたりによる非回転ゆるみの軸力低下分を補填することです。したがって、皿ばねはばね機能が残るように密着させずに使用します。皿ばねには荷重値とたわみ量が規格化されており、用途に応じて最適な種類を選択する必要があります。
一方、JIS B 1251で規格化されている皿ばね座金は、回転ゆるみを抑えるために密着荷重以上で締付けることを前提としています。ボルト・ナット座面の摩擦力を高めることで座面のすべりを抑えて、ねじの戻り回転を防止します。また、密着荷重以下ではばね座金と同様にばねの反力を利用し、なじみ・へたりで減少した軸力を補填する働きがあります。ばね座金同様に皿ばねや皿ばね座金も密着荷重以上で締付けた場合は、ばね効果がほとんど発揮されないため使用時にはご注意下さい。
ばねの作用とゆるみ防止について
上述の通り、ばね座金と皿ばね座金はばねの反力を利用したゆるみ止め部品です。
ばね効果を有するゆるみ止め部品には、次のような機能が複数必要とされています。
- へたり等の永久変形の影響をばね作用で補填
- ねじ部の摩擦抵抗を増して戻り回転を防止
- 座面部の摩擦抵抗を増して戻り回転を防止
ここで紹介した座金類は1または3の機能を有するものになります。しかしながら、実際のところ、ばね座金や皿ばね座金を利用しても、ねじの戻り回転防止効果は低いと考えられます。
今後、ユンカー式軸直角ゆるみ試験機(軸直角方向繰返し荷重によるゆるみ試験)を使い、ボルトやナットで締結するねじ部品以外の座金類(ばね座金や皿ばね座金)などの締結用部品のゆるみ止め効果についても評価を行っていく予定です。
引用・参考文献
吉本 勇編:JIS使い方シリーズ ねじ締結体設計のポイント (改訂版),
日本規格協会 (2002) p. 110-111, 249-250,
酒井智次:増補ねじ締結概論,養賢堂 (2003) p. 121-126,