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延性破壊と脆性破壊(金属の損傷の分類 静的破壊)

2020.09.18

金属の損傷の分類

機械的構造物などの金属部品が損傷すると品質の問題だけではなく、製造物の安全事故につながることになります。それゆえ、金属の損傷について知見を深めることは安全設計のために非常に重要であります。

先ず始めに金属の損傷を現象として分類しますと、引張・圧縮・曲げ・ねじりなどの過大応力作用による静的破壊、繰返し応力負荷による疲労破壊、全面腐食・すきま腐食・孔食・異種金属接触腐食などの腐食による損傷、応力腐食割れ・水素脆化・クリープなどの特殊環境による破壊、成形加工不良・二次加工脆性などの成形加工に伴う損傷に大きく分けることができます。

 

 

静的破壊には延性破壊と脆性破壊がありますので、それぞれ説明します。

 

延性破壊

延性破壊は過大応力が作用して塑性変形を起こし、引き伸ばされて最終的に破壊することです。この塑性変形とは材料に応力がかかると伸びる性質のことをいいます。

塑性変形の大きさが中程度の場合、カップアンドコーン型破壊といわれる特徴的な破断面が観察されます。塑性変形の大きさが小さい場合、ある結晶学的なすべり面で分離するせん断破壊、あるいは先が尖端状となったチゼルポイント型破壊が知られています。せん断破壊は結晶粒が粗大な材料の場合に発生しやすく、チゼルポイント型破壊は軟らかい金属などで見受けられます。

延性破壊は微視的には結晶粒内の微小空洞の発生と成長合体が原因であり、光学あるいは電子顕微鏡レベルで観察できるミクロ破面には窪みを意味するディンプルと称される特徴的な破面が現れます。

 

脆性破壊

脆性破壊とは応力が作用して塑性変形を伴わないで破壊することです。

材料を引張試験した時の性質である応力―ひずみ線図で表しますと、弾性変形時のひずみが小さい初期に破壊してしまうことになります。塑性変形が小さいため、破断面は応力作用方向に垂直な垂直破壊と称される平滑面になり、キラキラした銀白色の反射色調をしています。

また、シェブロンパターンと称される特徴的な山型模様が観察されることがあります。シェブロンパターンでは破壊の起点は山型模様の頂点の位置にあります。

 

 

脆性破壊は低温、衝撃荷重、切欠きなどの特定の条件で発生しやすく、低温条件下については低炭素鋼、ガラス、鋳鉄などの材料で起こりやすい破壊です。

また、低温環境構造用鋼、冷間加工SS材、大型調質鋼、焼入れ工具鋼などで比較的多く発生することが知られています。き裂が伝わる伝播速度は高速なので一気に破壊することになります。

 

 

ミクロ破面は、へき開破面、擬へき開破面、粒界破面のいずれかとなります。

へき開破面とは特定の結晶面で割れることを意味するへき開破壊した破面のことで、微小な平坦面が観察できます。この微小な平坦面はへき開ファセットとも呼ばれ、へき開ファセット同士で段差が形成されるためにファセット上に平行な段差模様が現れます。この段差模様は川状に見えることからリバーパターンといわれます。リバーパターンき裂が進展するに伴って合流した模様に変化していきます。一方、擬へき開破面とはへき開破壊が不明瞭な場合に使われます。粒界破壊とは結晶粒界に沿って脆性的に割れた破壊であります。

 

 

 

衝撃力が作用する破壊に関して

き裂欠陥を有する材料に衝撃力などの外部応力が加わると破壊に至ることがありますが、この破壊に対する抵抗力の指標として破壊靭性があります。

材料の破壊に対する粘り強さを意味する用語として靭性がありますが、破壊靭性はその具体的な指標の一つであります。

衝撃荷重は静的負荷に対する対義語である動的負荷呼ばれますが、その指標である動的破壊靭性値は動的破壊靭性(K1C)試験によって求められます。この試験では荷重と開口部変位の関係を測定します。動的破壊靭性値は降伏応力や引張強さが高い材料ほど低下する傾向があります。

したがって、高強度材を使った部品設計においては引張強さと破壊靭性の両方をバランス良く兼ね備えることが重要ですが、破壊靭性の代わりに引張試験で簡単に測定値が得られる引張強さと伸びを使って設計することが重要部材でなければ比較的多いと考えられます。

 

静的強度安全設計

許容応力

静的荷重あるいは衝撃荷重がかかる場合の安全な許容応力は、基準応力/安全率で示されます。ここでいう基準応力としては、部材に加わる応力の種類が引張か圧縮か曲げかなどによって引張強さ、圧縮強さ、曲げ強さなどの機械的性質を用います。安全率は例えば機械部品か航空宇宙分野か吊り下げかなどといった使用分野で異なり、安全率が高すぎると重量増加、コスト増加につながってしまうことになります。

つまり、使用分野と荷重の種類に応じた安全率を設定することで許容応力を求めることになります。

 

一般的な安全率について

機械部品の一般的な安全率を例示します。機械部品に多く使用される鉄鋼材料では安全率は静的荷重では3、衝撃荷重では12としています。なお、鉄鋼は圧延工程を経た炭素鋼のことで、鋳鋼は炭素量が2.1%までである鋼の鋳物、鋳鉄は炭素量が2.1%以上と多く含有する鋳物のことであります。

衝撃荷重の一般例としては、バネ、ロボットアーム、巻上げ機ワイヤロープ、プレス機、圧延機、車軸などが挙げられます。

 

 

機械的性質に対する応力集中の影響に関して説明したいと思います。延性破壊では応力集中は殆ど影響せず、切欠きが存在しても引張強さは殆ど変わりません。一方、脆性破壊では応力集中は強く影響を及ぼすので脆性破壊が懸念される場合は応力集中係数を考慮した設計が必要になります。

 

高温環境下、低温環境下においては、高温用材料としてSNCM鋼(ニッケルクロムモリブデン鋼)、SUH鋼(耐熱鋼)、SUS鋼(ステンレス鋼)などの利用検討が推奨されており、一方、低温用材料としてオーステナイト系SUS鋼の利用検討が推奨されています。

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