金属疲労(切欠き効果の影響)

2021.08.06

切欠き効果について

機械構造物や機械部品の金属疲労破壊は殆どが切欠き部で発生します。この切欠き部とは幾何学的な断面形状の変化部のことであり、孔、切欠き、ねじ部、キー溝、段付き部、き裂、きず、欠陥など多様なものがありますが、通常は総称的に切欠きと呼ばれます。疲労に及ぼす切欠きの影響として、切欠き底における応力集中が原因となって疲労き裂の起点となること、そしてこの応力集中と応力勾配の要因によって疲労限度が低下することがあげられます。

切欠き効果とはこの切欠き部において応力集中に起因して疲労強度が低下することを言います。図1に疲労に及ぼす切欠きの影響の概略を示しました。

図1 疲労に及ぼす切欠きの影響

 

 

応力集中係数と応力勾配

部材の切欠き効果の影響度合いを調べるには応力集中係数と応力勾配について検討しておく必要があります。応力集中係数は切欠きの形状と寸法だけから一義的に決まる係数です。現在では基本的な形状について応力集中係数の解析結果がかなり蓄積されており、個々のハンドブックや便覧等で求めることができます。図2は有限幅の板材の中央に円孔がある場合の円孔縁の応力集中係数を求めたものです。円孔縁における最大応力に関わる公称応力は円孔の位置での最小断面での応力を基準とします。すなわち、

最小断面での公称応力・・・σn= (W/(W-a))・σ

円孔縁における最大応力・・・σmax= α・σn= α・(W/(W-a))・σ

となって、円孔縁に発生する最大応力は遠方の引張応力の3倍よりも大きくなります。

図2 円孔を有する平板の応力集中計数

 

 

図3は切欠き底近傍の応力分布を示したものです。最大応力σ maxは公称応力と応力集中係数の積の値です。疲労強度は一般的に切欠き底の応力が大きくなれば低下しますが、切欠き底の最大応力σ maxの値だけでは決まらず、内部に向かって応力がどのように変化するのかが影響します。切欠き底の最大応力が等しくても内部に向かって応力が緩やかに低下する場合と急激に低下する場合とで疲労強度に差が生じ、前者の場合が厳しい状況となります。応力の変化を表す指標として応力勾配があります。応力勾配は切欠き底から離れるにしたがって応力がどのような割合で減少するかを示す量で図中の式で表されます。

 

図3 切欠き底近傍の応力分布

 

切欠き底で疲労き裂が発生する限界の応力が応力勾配でほぼ一義的に決まります。つまり、σ maxが同じであっても応力勾配が小さいほど切欠き近傍での応力低下の度合が小さく、材料にとってより厳しい応力状態になって疲労限度がより低下することになります。

切欠き係数に対する応力集中係数の比率と応力勾配との関係図が各種の鋼材について求められています。この図を使うと応力集中係数と応力勾配を数値解析や各種文献値から求めることで切欠き係数の算出が可能になり、実際の部材の疲労強度評価に応用することができます。

 

 

切欠きと疲労限度

応力集中係数が大きい切欠きを有する部材は疲労限度が平滑材に比べてかなり低下します。切欠き効果の程度は平滑材の疲労限度σw0と切欠き材の疲労限度σwkの比で表し、これを切欠き係数βといいます。すなわち、

切欠き係数β=σw0/σwk

また、一般的に切欠き係数は応力集中係数よりも小さくなります。

図4は応力集中係数と切欠き係数の関係を示した一例で、軟鋼では応力集中係数が2を超えたあたりから切欠き係数の上昇は緩やかになり、強度の高い合金鋼では応力集中係数が3を超えたあたりから切欠き係数は殆ど水平近くになります。

図4 応力集中係数と切欠き係数の関係の一例

 

疲労限度の求め方

機械構造部材の金属疲労に対する安全設計のためには前報で説明してきましたがS-N曲線が必要です。当該部材を使った疲労試験を行うことが安全設計のためにベストといえます。しかしながら実際には種々の事情で疲労試験が困難な場合も多いものです。切欠き材に対して疲労限度を予測する方法について説明したいと思います。

切欠き試験片について多くの疲労試験結果を整理し、引張強さおよび各箇所の寸法をパラメータとして切欠き係数を計算できる切欠き係数計算図表があります。種々の切欠き形状および負荷の種類に対して計算図表が用意されています。この計算図表が用意されていれば疲労限度の予測が可能になります。

次に、切欠き感度係数を使った推定方法について説明します。

この方法では切欠係数βが以下の式で求められます。

β=(α-1)×η+1

α:応力集中係数

η:切欠き感度係数

η(イータ)の求め方としては、平滑材の引張強さσBから硬さHVを算出し、例えば図5に示す鉄鋼材料の硬さHVと切欠き感度係数ηの関係図から求めることができます。ここで、硬さHVはσB=3.2HVの関係式を使います。しかしながら、相似形の試験片では応力集中係数が同じでも必ずしも同じ切欠き係数とはなりません。この方法は物理的な意味は特にありませんが、切欠き感度係数を実験的に求めておけば切欠き効果を評価する簡便な手法となります。強度の高い鋼材ほど切欠き感度係数は1に近づき、切欠きに対して敏感になります。

図5 鋼材の硬さと切欠き感度係数の一例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に停留き裂について触れておきたいと思います。切欠き底が鋭い場合、一旦き裂が切欠き底で発生しても進展を停止する現象のことをいいます。停留き裂のイメージを図6に示します。停留き裂が起こる原因として、き裂進展に伴ってき裂面に誘起される残留引張塑性ひずみ等がき裂の開口を妨げるように作用するためと考えられています。き裂停留現象のために一般に切欠き材の疲労限度には切欠き底にき裂が発生する限界の強度σw1と停留き裂として生じて破断には至らない限界の強度σw2があります。σw0は平滑材の疲労限度です。停留き裂が発生するのは、応力勾配χ(カイ)がある値以上、すなわち切欠き半径ρ(ロー)がある値以下の場合に発生することが知られています。

図6 停留き裂のイメージ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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