金属疲労(疲労試験の仕方)

2021.11.16

疲労試験について

疲労試験は、材料・部品の疲労強度を試験する材料試験で、材料として主に金属、プラスチック等について試験されます。機械構造用材料として広く使われる金属材料・構造体の破壊事故は重大な結果を招くことから、安全設計の観点から金属材料・部品を対象とした疲労試験が過去から多く実施されています。疲労試験は疲労試験機によって行われますが、各種ある機械的材料試験の中でも疲労試験は、試験機が高価であること、実施するにあたり操作手順が比較的多いこと、また疲労に関する専門知識が複雑であることから、取りつきにくい試験法であると思われます。

図1に疲労試験の実施にあたり必要な具体的要件を示しました。荷重の負荷条件として引張圧縮、回転曲げ、平面曲げ、ねじりなどの負荷形式があります。負荷荷重の波形は応力波形ともよばれますが、振動の基本波であるサイン波が通常用いられます。他に、三角波、矩形波、ランプ波、任意波なども試験機によっては対応しています。試験周波数は数Hz~数十Hzが一般的ですが、疲労限度付近で1000万回試験する場合には長時間連続運転することになります。近年注目され始めたギガサイクル疲労試験では通常の疲労試験機では対応が困難で、超音波を使った試験機で周波数20 kHzレベルまで高めて実施されます。試験材については材料のS-N曲線を求める目的でテストピース試験片を作製する場合、実機の疲労対策の目的で実機から材料を切り出して試験片とする場合、また実機部品そのものを疲労試験にかける場合などがあります。実機部品を疲労試験する場合は治具を作製し、治具を介して試験体を試験機に取り付ける必要があります。また、試験環境としては室温大気中が一般的ですが、液体中や腐食環境、高温域、低温域での試験も行われます。

この疲労試験で求める測定値は疲労破壊によって破断するまでの荷重繰返し数です。負荷荷重の大きさを何点か取ることでS-N曲線を作成できます。同一条件の試験片の数を増やせば当然ながら信頼性は向上します。

図1.疲労試験の実施に必要な具体的要件

 

 

疲労試験機

図2に主要な疲労試験機の種類を示しました。疲労試験は試験材に応力を発生させるために荷重を負荷します。試験材に対する荷重の負荷方式の違いから、引張圧縮疲労試験機、回転曲げ疲労試験機、平面曲げ疲労試験機、ねじり疲労試験機があります。

引張圧縮疲労試験機では固定した試験材の一軸方向に引張圧縮荷重(垂直荷重)を負荷する方法です。引張圧縮疲労試験機の荷重発生方法としては油圧式、電気式、超音波式などがあり、油圧式は大型機まで可能ですが、電気式は中型~小型機に適しています。超音波式は小型機になります。試験材は丸棒試験片、板状試験片、また実機部品にも対応できます。

回転曲げ疲労試験機では回転する試験材に曲げモーメントを負荷する方法です。回転曲げ疲労試験機はモータ回転を駆動に使う機械的試験機です。曲げモーメントを加える方法としては試験材の長手方向に対して垂直荷重を加える方法や試験材両端から圧縮力を加える方法などがあります。試験材は丸棒試験片、また断面が円形の回転軸系実機部品にも対応できます。

平面曲げ疲労試験機では板状の試験材に対し、板面の直交面内に曲げモーメントを負荷する方法です。曲げモーメントを加える方法としてはモータ回転運動を偏芯カムによって往復力を発生させ、試験材の片方を上下変位運動させる方法が一般的です。試験材は、板状試験片、実機部品からの切り出し材、また実機の平板部品にも対応できます。

ねじり疲労試験機では試験材の両端で軸心に対して互いに逆方向にねじりトルクを与え、ねじり応力を発生させる試験方法です。ねじりトルクを与える方法として油圧サーボ制御式やモータ回転駆動による機械式などがあります。試験材は丸棒試験片、また断面が円形の実機部品にも対応できます。

なお、引張圧縮疲労試験機は最大荷重、最大変位量、最大周波数について性能値を有していますが、これらの3条件を自由に設定できる訳ではありません。最大荷重をパラメータとして周波数と変位量の関係を示した性能曲線によって規定されています。

図2.主要な疲労試験機の種類

 

 

図3は、ハードロック工業(株)が保有する引張圧縮疲労試験機の外観です。油圧ターボ制御方式で最大荷重100 kN、上下に荷重を加えながら振動させることができる変位量(ストローク)は±50 mmです。セットできる試験材の最大長さは約300 mmです。

図3.引張圧縮疲労試験機の外観(ハードロック社保有)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲労試験の準備

疲労試験を行う目的を大別しますと、大きく二つのことが考えられます。

一つ目は、各種金属材料のS-N曲線を実測することです。鉄鋼材料でも代表的な鋼種についてはデータブックに主に平滑材についてのS-N曲線が多数掲載されています。しかし、実機で使用されている実際の材料は通常は平滑材ではなく、また製造メーカ・製造条件なども異なっており、当然引張強さなどの機械的性質も同じではありません。そのため特に重要部品であれば、サプライヤーから納入される実際の鋼材を使って疲労に対する安全設計の観点から疲労試験を実施します。

二つ目は、製品の品質、安全面で不具合が発生し、その原因分析と対策を講じる目的で疲労試験が行われます。この場合、実機からの切り出し材、または実機部品そのものを使って疲労試験が行われ、安全率の評価・検証が行われます。この取得したデータを基に新たな対策を講じます。

疲労試験の準備として、まず材料にかかる応力の種類と負荷方向を評価する必要があります。すなわち、対象物で問題となるのが引張圧縮疲労なのか、回転曲げ疲労か、平面曲げ疲労か、ねじり疲労かといったことを決定しておきます。

これが決定されれば自ずと負荷荷重方向も決まります。これによって環境条件も含めた負荷条件が決まります。

次に、試験材の用意についてですが、試験材としては先に述べたようにテストピース、実機からの切り出し材、実機部品が考えられます。テストピースは、引張圧縮用はJIS Z 2273「金属材料の疲れ試験方法通則」、回転曲げ用はJIS Z 2274「金属材料の回転曲げ疲れ試験方法」、平面曲げ用はJIS Z 2275「金属平板の平面曲げ疲れ試験方法」を参照して用意します。引張圧縮疲労試験片の形状は円形断面または板状ですが、寸法等は規定されていません。参考として図4に平行部を有した丸棒試験片の基本的な形状を載せました。回転曲げ疲労試験片と平面曲げ疲労試験片については寸法についてもJISで規定されています。ねじり疲労試験片は円形断面となりますが、寸法は自由です。

図4.引張圧縮用丸棒疲労試験片の例

 

 

実機からの切り出し材については試験片が作製できる程度の切り出し部分の大きさが必要です。その後切り出し部分を使って試験片を作製します。実機部品の疲労試験では、実機部品と試験機の掴み部を接続するための治具が必要になります。治具の製造で注意することは、試験機から治具を介して部品に負荷される応力ベクトルが所望の部品位置に正しく作用するように設計しなければなりません。また、当然ですが治具にも繰返し応力が加わりますので、特に治具切欠き部などが十分疲労限度以下になるように安全係数を高く取ります。
ボルト・ナット単体あるいは締結体部品で一般的に使用される治具形状を図5に例示します。治具の材料は機械構造用の鋼材が使われますが、奥行長さを十分長くして断面積を大きく取ると治具が疲労破壊することはありません。なお、ねじ部品の引張疲労試験についてはJIS B 1081に試験方法及び結果の評価が規定されています。

 

図5.ボルト・ナットの疲労試験に用いられる治具の例

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

疲労試験の実施

試験材が用意できて試験条件も決定されれば、疲労試験を行うことになります。ここでは、引張圧縮疲労試験の場合について手順を述べたいと思います。

以下に順を追って説明します。

(1) 試験機を稼働させる。夏場では試験機冷却能力の確認も必要です。

(2) 試験機掴み部の位置がおよそストローク±0付近になるように掴み部を移動します。

(3) 試験材が偏芯しないように注意しながら試験材の片側を試験機掴み部に取り付けます。もう片方の試験機掴み部を移動させて試験材を固定させます。

(4) 応力(荷重)条件を設定します。応力条件は図6のように応力比(R=最小荷重/最大荷重)としてR=-1もしくはR=0で行われます。また、平均応力を一定値とした応力条件でも行われます。

R=0では試験機の荷重精度の関係で荷重ゼロ付近では圧縮側に入り込む懸念があります。このため例えば、R=0.05のように0よりわずかにプラス側の値にします。

試験機で実際に入力する数値は最大荷重と最小荷重になります。

(5) 試験周波数を入力します。通常、5 Hz~20 Hz程度です。

(6) 試験材が破断すると自動的に停止するようにリミッター機能の設定を行います。例えば、荷重条件では最大荷重よりやや大きな値、および最小荷重よりやや小さい値を設定します。また、変位条件では最大変位よりやや大きな値、および最小変位よりやや小さな値を設定します。このリミッター機能によって破断繰返し数のカウント表示が自動的に停止します。

(7) 荷重を加えるスタートスイッチを押します。

(8) 試験材の破断後、破断繰返し数を記録します。必要であれば、荷重・変位の時間変化のデジタルデータを記録することも可能です。

(9) 試験材を交換し、荷重条件を何点か変化させて応力(荷重)と破断繰返し数を求めます。

図6.疲労試験で行われる主な試験波形の例

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