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ダブルナット(ゆるみ止め部品)

2022.11.10

ねじ部品は様々な種類があります。今回は、一般的に使用される六角ナットを上下に2個使いすることでゆるみ止め効果を期待したダブルナットを紹介します。

なお、施工に関しては一般的な施工方法の羽交い締めのなかで特に下ナット逆転法(上ナットを押さえ、下ナットを戻し回転させる)に関して記載します。

 

特徴と課題

  1. 上下2つのナットを使ってねじの戻り回転を防止するもので、正しく施工すれば非常に優れています。
  2. 正しい施工方法としては、羽交い締めによるロッキングがあり、一つは上ナット正転法でもう一方は下ナット逆転法です。
  3. 下ナット逆転法は、締付けた下ナットを戻すため、初期締付け時の締結力(ボルト軸力)は低下します。(低下率は10%~90%とばらつきが大きい)
  4. 一人での作業可能な羽交い締めによるロッキングは、足場環境の良い作業現場でも、せいぜいM12程度で、それ以上のサイズになると十分なロッキングを施すことは極めて困難です。
  5. 多くの作業環境下では、完璧な羽交い締めによるロッキング作業を施すことは極めて困難です。
  6. 下ナットを締付けて、次に上ナットを同様に締付けるだけの一般的な施工方法の場合はロッキングがなされていないため、一般ナット同様に振動や衝撃の加わる箇所では、ねじの戻り回転を防止する機能は殆どありません。

詳細については、実際に各種締付け条件を設定して評価した結果を「ねじ締結技術ナビ」お役立ち資料として公開していますので下記のリンクよりご確認下さい。

「ねじ締結体のトラブル 原因と対策 ―ダブルナット編―」

 

■ダブルナットの羽交い締めによるロッキングとは

2個のナットを羽交い締めすることで、下ナットはボルトのねじ山をボルト軸方向に押し下げ、逆に上ナットはボルト軸方向に押し上げることにより、上下ナットとボルトを固定します。これをダブルナットでのロッキングと言います。

ロッキング力は締結力(軸力)ではありません。

特に逆転法の場合は、ロッキング力を上げると軸力が低下するので注意が必要です。

図1 ダブルナットのロッキング状態

 

■取り付け段階でのボルトとナットにかかる力(模式)

ステップ1 下ナットを決められたトルクで締付け

シングルナットの締付け状態と同じで、締め付けによりボルト軸上方へ押し上げる力で締結力(軸力)を発生させています。

図2 下ナットを決められたトルクで締付け状態

 

ステップ2 上ナットを下ナットとほぼ同じトルクで締め付け 途中段階

上ナットがボルトを押し上げることでボルトが軸方向に伸ばされ、下のナットがボルトねじ山にかからない状態になります。

この状態は上ナットのみで締結されていることとほぼ同じ状態で、羽交い締めをしない施工法ではこのようにロッキング状態ではないので注意が必要です。

図3上ナットを下ナットとほぼ同じトルクで締め付けた状態

「意外と知らないダブルナット」の動画はこちらから

 

ステップ3 羽交い締めによるロッキング(本来のダブルナットのロッキング状態)

下ナットを締めた角度の半分程度戻し回転させることで、下ナットはボルトのねじ山を押し下げる力が発生し、ボルトが上下ナットでロッキングされた状態になります。

図4 羽交い締めによりロッキングされた状態

 

*「ダブルナット嵌め合い解説」の動画も本稿にありますので是非ご覧下さい。

 

■羽交い締め施工の説明(下ナット逆転法)

上ナットをスパナで回り止めし下ナットを他のスパナで戻し方向に回転させてロッキングする方法で、国内では一般的に推奨されている方法。

*下ナットを戻すために、軸力は減少し管理は難しい。

ダブルナットの施工による軸力推移はこちらから

図5 下ナット逆転法の締付け方法

 

なお、M16 以上のサイズでダブルナットを正しく施工するためにはかなり大きな締め付けトルクを要し、1人の人力では困難です。

検証動画は下記の「ダブルナット 羽交い締め可能なサイズ検証動画」にありますのでご覧ください。

 

■ダブルナット嵌め合いCG画像

■ダブルナット 締付け方法の動画

 

■ダブルナット 羽交い締め可能なサイズ検証動画

 

引用・参考文献

[1]酒井智次:増補ねじ締結概論,養賢堂(2003), p.135-136

[2]山本 晃:ねじ締結の原理と設計,養賢堂(1995), p.135-138

 

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