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プリべリングトルク形ナット(ゆるみ止め部品)

2022.04.25

ねじのゆるみは、ねじが戻り回転して生じるゆるみとねじが戻り回転しないゆるみに大別されます。プリべリングトルク形ナットの多くは、ねじの戻り回転の防止対策として使用されます。ここでは、プリべリングトルク形ナットのゆるみ止め部品の種類について紹介します。なお、プリベリングトルク形ナットを含めたゆるみ止め方法につきましては、ねじ締結技術ナビ お役立ち資料の「ねじ締結体のトラブル 原因と対策 -回転ゆるみ編-」にてまとめられておりますので、是非ダウンロードしてご確認ください。

 

 

プリベリングトルク形ナットとは

プリべリングトルク形ナットは、JIS B 1056によれば 『固有のプリべリングトルク発生部の効果によって、はまり合っているおねじ上を自由に回転せず、かつ、締付け力又は圧縮力に依存しない回転抵抗を持つナット』[1]と定義されております。具体的にはねじ山を変形させたり、ねじの有効径をすぼませたり、特殊ねじ山形状を用いたり、ナイロン等の樹脂を介在させたりしてねじの戻り回転に対する抵抗を増やそうとするものです。プリべリングトルクの発生部の形状は任意となります。形状等はJIS B 1199-1, 2, 3, 4に制定されております。

 

 

表1 プリべリングトルク形ナットの日本産業規格と国際規格[2]

表1 プリべリングトルク形ナットの日本産業規格と国際規格

 

 

プリベリングトルク形ナットの種類

図1 戻り止め機能を有するナット・ボルトの例:(a) 樹脂インサートナット、(b), (c) 樹脂インサートボルト、(d) 細溝付きセルフロックナット、(e) 溝付き構造用ナット、(f) 全金属有効径変形型ナット、(g) 全金属ピッチ変形型ナット、(h) 板ばねインサートナット

図1 戻り止め機能を有するナット・ボルトの例[3, 4]

 

今日では、図1のように多くのプリべリングトルク形ナットが開発、製造されております。以下ではその一部を紹介します。これらのプリべリングトルク形ナットは、戻しトルクを増大させる(戻り止め効果を持たせる)ことでねじの戻り回転を遅らせるものです。多くの種類がありますが、代表的な3例(①板ばね・樹脂等をインサートする方式、②ねじのピッチに差を持たせる方式、③ねじ山を変形させる方式)について締結時のねじの断面模式図を図2に示します。いずれのタイプも基本的には、何らかの形で回転抵抗を与えることにより発生する摩擦の力を用いて戻り回転を遅らせるものになっています。

(1) 非金属及び金属インサート型

①樹脂インサートナット (図1(a))

樹脂リングをナット上面にかしめ一体化したタイプ

②樹脂コーティングボルト・ナット

樹脂をボルト及びナットのねじ部にコーティングしたタイプ

③板ばねインサートナット (図1(h))

特殊な板ばねリングをナット上面にかしめ一体化したタイプ

④コイルばねインサートナット

コイルばねをナット上面にかしめ一体化したタイプ

(2) 全金属製型

①溝付き型(図1 (d),(e))

ナットの一部に溝割を入れてその部分の内径を小さくし、その摩擦でロックするタイプ。

②ピッチ変形型(図1 (g))

ナットの一部にピッチの差を生じさせ、その摩擦でロックするタイプ。

③変形ねじ山型

ナット頂部のねじ部を卵形、楕円形などに変形させ、おねじを押し込むと、この変形部をおねじと同じ円形に押し広げるため、この摩擦でロックさせるタイプ。

 

図2 プリべリングトルク形ナット締結時のねじ断面模式図:(1) 非金属及び金属インサート型、(2) ②ピッチ変形型、(2) ③変形ねじ山型

図2 プリべリングトルク形ナット締結時のねじ断面模式図

 

以上のことから、一口にプリベリングトルク形ナットと言っても、ねじの戻り回転を防ぐという重要な機能を発揮するために、様々な種類のものが存在していることがお分かりいただけたかと思います。

 

 

参考文献
[1]JIS B 1056: 2019「締結用部品-プリベリングトルク形鋼製ナット-機能特性」p. 2.
[2]JIS B 1199-1: 2001「プリベリングトルク形ナット―第1部:非金属インサート付き六角ナット」p. 10.
[3]編集委員長 吉本勇:JIS使い方シリーズ ねじ締結体設計のポイント(改訂版),日本規格協会(2002)p. 240.
[4]日本航空技術協会「航空機の基本技術 -航空整備士共通実地試験基準-」第5版第1刷(2010)p. 329.

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