ご存じの通り、目にするほとんどのネジは右ねじ(時計の針が回る方向に回し締め込みを行うねじ)です。
しかし、回転軸に回転体をねじ固定する場合、左ねじ(時計の針が回る方向と逆方向に回し締め込みを行うねじ)を用いる場合があります。これは回転軸に回転体を固定するねじをゆるみにくくするための工夫です。
扇風機を例に説明します。扇風機の羽根を回転軸に固定するキャップねじ(スピンナー)はほとんどが左ねじで、左回転(時計の針が回る方向と逆方向)で締め込み/固定を行います。
多くの電動機(モーター)回転軸は右回転(時計の針が回る方向)です。扇風機のモーターが右回転を始めても扇風機の羽根はすぐには動かない(追従しない)ため、モーター回転軸からは相対的に扇風機の羽根が左回転をした状態になり、キャップねじには左回転の力を受けます。仮に、キャップねじが右ねじであった場合、扇風機を始動するたびにキャップねじには左回転の力がかかり徐々にゆるんでいきます。逆に、キャップねじが左ねじの場合、扇風機を始動するたびにキャップねじには締めこむ力が働きます。
これが右回転体には左ねじを使う理由です。
なお、扇風機を止める場合、キャップねじには始動とは逆方向の力(羽根を右回転させる力)が働きますが、停止は始動時よりもゆっくり止まるため発生する力は小さく、左ねじのキャップは正しく締めていればほとんどゆるみません。
つまり、右回転と左回転が交互に生じる場合や、始動と停止が同じように急速に生じる場合、回転体固定ねじには左右の回転力が生じるため右ねじ/左ねじの区別なくゆるむ可能性があります。
したがって、急激な始動/停止が発生する場合や右回転/左回転が頻繁に交代する場合の回転体固定には右ねじ/左ねじとは異なるゆるみ止めが必要になります。
また、回転系におけるねじ固定には「回転軸を支える軸受け(例えばベアリング)との関係」や「偏重心(回転中心と回転体重心位置のずれ)」等回転体特有の要求事項が存在します。
今後、回転軸へのねじ固定について、項目ごとに逐次 掲載/説明します。次回は「回転軸と回転体の締結」について説明します。