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鉄鋼材料の種類と機械的性質(主要鉄鋼材料編)

2021.01.12

主要鉄鋼材料の種類

JIS鉄鋼に記載されている鉄鋼材料の中で主要なものについて機械的性質を中心に説明します。主な各種鉄鋼材料とJIS記号を以下に示します。JIS鉄鋼では用途別に分類されており、各用途別に分類された鋼材には普通鋼と特殊鋼(合金鋼)の両者が混在しています。但し、普通鋼は構造用、一般加工用に比較的多いです。

 

 

 

主要な普通鋼

普通鋼とは鉄にC(炭素),Si(ケイ素),Mn(マンガン),P(リン),S(硫黄)の主要5元素のみ入った炭素鋼のことです。炭素量が多い鋼種では通常は、焼入れ、焼戻しの熱処理が行われます。各5元素の特徴を以下に示します。

 

冷間圧延鋼板

主要な普通鋼としては前報のSS材以外に冷間圧延鋼板SPC材があげられます。板金やプレス加工に多用される圧延鋼板で、厚さは一般用で0.4~3.2mmです。種類は5種類で加工性を表す記号C~Gが付与されています。SPCCは一般用ですが、SPCD以下はC量が少なくて伸びが大きいことから深絞りに適しています。SPCCについては調質区分で硬質材もあり、硬質SPCCでは加工硬化によって引張強さが550MPa以上になります。

なお、補足ですが、冷間ではなくて熱間圧延軟鋼板SPH材もあり、コストが安く冷間では対応していない板厚のものがあります。例えばSPHCでは厚さ1.2~14.0mmに対応しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主要な特殊鋼(合金鋼)

主要な特殊鋼(合金鋼)として機械構造用炭素鋼、機械構造用合金鋼、ステンレス鋼、冷間圧造用炭素鋼・冷間圧造用ボロン鋼があげられます。機械構造用合金鋼については前報で概略説明しました。

 

機械構造用炭素鋼

機械構造用炭素鋼の種類等について以下の表に示します。分類として炭素鋼とはだ焼用鋼があります。通常、熱間圧延、熱間鍛造等の熱間加工で製造されています。はだ焼用鋼は、浸炭焼入れによって表面硬化させるのに適した鋼種のことで炭素量は0.20%程度以下に抑えられて浸炭しやすくされています。

S10CからS75Cまでの鋼種では記号数字の部分が含有炭素量を表しています。例えばS45Cは炭素量が0.42~0.48%の範囲であって中間値は0.45%となっています。炭素量がおよそ0.20%以上の鋼種では焼入れ焼戻しによって引張強さが炭素量に応じておよそ310MPa以上から780MPa以上のクラスの鋼種となります。例えばボルト・ナットにも使われる鋼材であるS45Cでは引張強さが通常690~900MPaの範囲になっています。

 

機械構造用合金鋼

機械構造用合金鋼には前報で7分類の鋼種があることを述べました。通常、熱間圧延、熱間鍛造等の熱間加工で製造されています。機械構造用合金鋼の中で特にクロムモリブデン鋼は通称クロモリ鋼と呼ばれる材料で機械的強度に優れ靭性もあるため強度の必要な機械部品として幅広く使用されています。

特にSCM435はボルト・ナットにも多用されています。SCM435について焼戻し温度と引張強さおよび伸びとの関係を図示します。焼戻し温度400℃付近で引張強さは約1400MPaと最大となりますが、伸びは低下します。通常、焼入れ温度830~880℃、焼戻し温度530~630℃の範囲の熱処理で、引張強さ930MPa以上、伸び15%以上としています。焼戻し後の金属組織は微細なフェライトとセメンタイトの混合組織であるソルバイトとなります。

 

ボルト・ナットにも多用されるSCM435とS45Cについて環境温度と引張強さの関係を示します。引張強さはSCM435の方が高いですが、高温になるにつれてSCM435はおよそ350℃から、S45Cはおよそ300℃から急激に低下します。

 

 

ステンレス鋼

ステンレス鋼にはオーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系、オーステナイト・フェライト系(2相型ともいう)、析出硬化系の5分類あります。各ステンレス鋼の特徴を以下の表に示します。ここでは耐食性と強度に関して説明します。

オーステナイト系は美観で耐食性が格段に優れていますが、大きなデメリットとして応力腐食割れの懸念があります。強度は普通鋼より少し高い程度ですが、加工によって加工誘起マルテンサイト変態が起こり非常に硬化して高い強度となります。フェライト系は耐応力腐食割れ性に優れ安価ですが、強度がステンレス鋼の中で最も軟質です。マルテンサイト系は強度が非常に高いのが特徴で機械構造用部品に多用されますが、応力腐食割れ(水素脆性)の懸念があります。オーステナイト・フェライト系は耐食性と耐応力腐食割れ性の両者に優れ、強度も高く靭性にも優れています。最近ではスーパー2相系という名称で優れた強度と耐食性を兼ね備えたステンレス鋼が開発されています。析出硬化系は特にマルテンサイト相タイプでは強度がかなり高く、耐応力腐食割れ性もマルテンサイト系より良好です。

ステンレス鋼を使う場合、環境条件と各鋼種の特徴を掴んで使用することが必要です。

 

冷間圧造用炭素鋼、冷間圧造用ボロン鋼

これらの線材はボルト、ナット、小ねじなどの各部品を冷間圧造で製造する際の線の製造に用いられます。線の記号としてはRを削除したSWCH,SWCHBの記号が使われます。代表例を以下の表に示します。

SWRCH材にはリムド相当鋼6種、アルミキルド鋼11種、キルド鋼21種が、またSWRCHB材にはキルド鋼12種が規格化されています。D工程はそのまま冷間加工したもので、DA工程は焼なまし後冷間加工したものです。近年、SWCHB線の需要も高まっています。

 

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