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実機の機械構造物が機械的負荷あるいは熱的負荷等の負荷荷重を受ける際に、この負荷荷重が複雑にかかって応力状態が単純な一軸状態にならない場合があります。すなわち、垂直応力、曲げ応力あるいはせん断応力などが二種類以上組み合わさったいわゆる多軸応力の負荷状態になっている場合であります。この多軸応力下の疲労強度を評価し寿命予測するには機械構造物の応力状態についてその多軸性を精度よく把握・考慮して疲労強度設計する必要があります。
応力状態についての補足
単軸応力状態(一軸応力状態)、二軸応力状態、三軸応力状態があります。二軸応力状態と三軸応力状態をあわせて多軸応力状態と呼び、また、多軸応力のことを組合せ応力といいます(図1)。以下に簡単に説明します。
単軸応力状態(一軸応力状態)
単軸応力状態(一軸応力状態ともいう)では、一方向に軸方向応力が生じています。例えば、通常の引張試験の試験体は単軸応力状態です。同様に、一般の圧縮試験の試験体も単軸応力状態となっています。
二軸応力状態
一軸応力状態より複雑になり、二方向に軸方向応力(垂直応力)が生じ、加えてせん断応力も生じている状態です。
三軸応力状態
図1の通り、x、y、z軸の垂直応力に加え6つのせん断応力が発生している最も複雑な状態で、実機の応力状態となります。
組合せ応力下の疲労寿命とその予測
組合せ応力下の疲労試験の実施例が極めて少ないことから、疲労強度に及ぼす多軸負荷の影響は明確にはなっておらず、疲労寿命評価方法が確立されている訳ではありません。通常の一軸の疲労試験結果を用いて組合せ応力下の疲労限度を推定する方法が検討されることも多いです。また、一般的に組合せ応力下の疲労について、疲労強度実験に基づいた寿命予測の手法が確立されているわけではありません。このため、従来から機械構造物の組合せ多軸負荷を考慮する疲労強度設計では、ミーゼスやトレスカといった相当応力・ひずみを用いて負荷状態を単軸下に置き換えて行われたりしています。すなわち、多軸負荷の疲労寿命は単軸疲労試験データを基に相当応力や相当ひずみを用いて評価されています。実際の疲労強度設計において、この手法による寿命評価でも安全率を適切に設定することなどによってトラブル事例は少ないと考えられています。詳しくは、ねじ締結技術ナビ技術資料の「組合せ応力下の疲労」をご覧ください。
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