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電気めっき 前編(表面処理の基本)

2021.05.19

電気めっきの特徴

電気めっきは電気分解の応用技術となるもので、めっき液中の金属イオンを電気化学的に還元して金属皮膜を生成する表面処理方法です。各種めっき法の中で現在主流となるめっき方法です。

原理は、図1のように電解液中で通電し、めっき金属を材料・部材に電気化学的に析出させる方法です。陽極側で金属の溶解反応が起こり、陰極側でめっきが行われます。

図1.電気めっきの原理 図1.電気めっきの原理

 

電気めっきの特徴(長所と短所)

<長所>
・めっき可能な金属の種類が多い
・めっきを積層することが容易である
・めっきの厚さを厚く処理できる
・無電解めっきと比べて処理コストが安い

<短所>
・めっき厚さのばらつきがある(均一性が低い)
・めっき可能な製品の大きさ、材質、形状に制限がある

電気めっきはめっき金属の種類が豊富です。

単金属めっきとしては、亜鉛(Zn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、スズ(Sn)などがあげられます。

合金めっきとしては防食用の(亜鉛-ニッケル合金)や(亜鉛-鉄合金)、装飾用の金合金やスズ合金、耐摩耗用の(ニッケル-タングステン合金、Ni-W)などがあります。複合めっきはめっき浴中に金属化合物などの微粒子を浮遊させてめっき金属中にこれらの物質を含有させるめっき法で、その微粒子としてアルミナ(酸化アルミニウム)、炭化ケイ素(SiC)、ダイヤモンドなどが利用されています。

代表的な電気めっきについて下地めっきの種類、適用素材、利用目的の概略説明を表1.示します。下地めっきとはめっきを行う素材の表面状態を調整して密着性や耐食性を向上させるために表層側の本めっきの下地となるめっきのことです。なお、表面に不動態皮膜を生じる金属素材には、不動態皮膜を除去してから下地めっきを行うことで密着性の向上が図れるストライクめっき法があります。

表1.代表的な電気めっきの種類表1.代表的な電気めっきの種類

 

短所であるめっき厚さの均一性が低い要因を図2に示します。
陰極側にV字形をしためっき処理品を置いた場合の電気めっき中に生じる電流線を模式的に示したものです。電気めっきは原理上、電流量とめっき厚さは比例関係になります。陰極側の素材では陽極に近いV字先端部は陽極に近いために電流密度が大きくなり、逆にV字中心部は陽極から遠いために電流密度は小さくなります。すなわち、V字先端部はめっき厚さが厚くなり、V字中心部はめっき厚さが薄くなって、素材全体ではめっき厚さが不均一となってしまいます。

 

図2.電流分布によるめっき厚さのばらつき説明 図2.電流分布によるめっき厚さのばらつき説明

 

電気めっきの種類

電気めっきでは多くの種類の金属をめっきすることが可能です。ここでは、主要な電気めっきとして亜鉛めっきについて説明して他の種類は「電気めっき 後編」で紹介します。

亜鉛めっき

亜鉛めっきは鋼板をプレス加工した部品、鋼材のボルト・ナット類、事務用品など多方面に利用されています。目的は鋼材の防食です。亜鉛めっきのままの状態では空気中で表面酸化が進んで変色するため、めっき後に化成処理としてクロメート処理を行って表面変色を防止しています。

図3は鉄鋼上の亜鉛めっきに小さなピンホールがある場合の腐食の生じ方を示したものです。亜鉛めっきにピンホールが生じた場合には、その腐食過程で亜鉛の方が鉄よりも卑金属なので亜鉛側が負極となって優先的に腐食溶解します。これを亜鉛めっきの犠牲防食といいます。この犠牲防食効果で腐食から守られ、鉄素地自体は錆びないことになります。

図3.犠牲防食効果(亜鉛めっきにピンホール発生時) 図3.犠牲防食効果(亜鉛めっきにピンホール発生時)

 

金属の電気めっき工程は、素材の種類やめっき金属の種類で異なりますが、一例としては、脱脂、洗浄、酸処理、電気めっき、後処理、乾燥といった工程で進められます。

亜鉛めっき工程の例を図4に示します。

図4.亜鉛めっき処理工程の一般例 図4.亜鉛めっき処理工程の一般例

 

・アルカリ浸漬脱脂 アルカリ性薬品を含む液に浸漬させて汚れや油脂を除去する方法のこと
・電解脱脂 アルカリ脱脂液の中で電解を起こし油脂を除去する方法のこと
・酸浸漬 表面の酸化膜などを酸で除去する方法のこと
・硝酸浸漬 めっき後の表面酸化膜を除去するとともに化成処理前の表面活性の目的で行われます。

 

亜鉛めっきにおけるめっき浴にはアルカリ浴としてシアン浴とジンケート浴、酸性浴として塩化アンモニウム浴と塩化カリウム浴があります。シアン浴は電解洗浄効果のために均一電着性にすぐれます。また、シアンによる析出抑止力のために硬さの低い膜が得られ、めっき後の機械加工性にすぐれます。ジンケート浴は毒性のシアンを除去しており処理液の排水管理が容易になります。但し、シアン浴に比べてジンケート浴では前処理を完全に行う必要があります。酸性浴では塩化アンモニウムや塩化カリウムの塩化物イオンによる活性化力のためにめっきを行う製品の表面酸化膜の除去効果があると考えられています。酸性浴はアルカリ浴と比べて均一電着性が劣ります。

 

表2.亜鉛めっき浴の種類 表2.亜鉛めっき浴の種類

 

以下のコンテンツも参考にして下さい。

▶ 電気めっき 後編(表面処理の基本)

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