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金属のクリープについて
材料を高温中で一定の荷重をかけ続けると、時間の経過とともにひずみが増加します。この現象をクリープと呼びます。金属では絶対温度表示による融点の0.3–0.4倍程度の高温域からクリープ現象が明確に起こり始め、鉄鋼材料ではおよそ600℃以上でクリープが顕著に起こることが知られています。もちろん厳密には、これ以下の温度でもクリープは起こりますが、変形速度が極めて小さいために通常の機械部品ではほとんど問題になることがありません。
図1はクリープ曲線と呼ばれるもので、材料を高温の荷重一定下の条件に置き、ひずみと時間の関係を表したものになります。一定荷重の作用で時間の経過とともにひずみが次第に増加していき、このクリープ曲線の傾きがひずみ速度になります。
クリープ曲線は以下のようにそれぞれ分類されています。
- 最初の荷重負荷の瞬間に生じる瞬間ひずみ
- 時間の経過とともにひずみ速度が減少する遷移クリープ(第I期)
- ひずみ速度がほぼ一定で変形が進む定常クリープ(第II期)
- ひずみ速度が加速して破断に至る加速クリープ(第III期)
第II期におけるひずみ速度は定常クリープ速度と呼ばれ、クリープ変形を特徴づける代表値として使われます。クリープ曲線の位置は応力が大きいほど、また温度が高いほど図の左上方向に移動します(図1の赤点線)。
このクリープ変形は弾性限度以内の小さな応力でも発生し、最終的に破壊に至るため、高温環境下において最も重要となるパラメータの1つとなります。また、クリープ現象は、クリープ速度が温度に依存する熱活性化過程で、クリープ変形を支配する基本則はひずみ速度であります。
クリープ試験(平滑試験片に引張(あるいは曲げ等)力を加え、加熱炉中で試験片温度を一定に保持して行われる試験)によってクリープ寿命評価をすることができます。代表的な評価方法としてLarson-Miller(ラーソン・ミラー)法が挙げられます。この手法では、クリープ速度の温度依存性が熱活性化過程であることを利用し、クリープ破断時間がクリープ速度に逆比例すると仮定しています。詳細につきましては、以下のねじ締結技術ナビ資料・コンテンツをご覧ください。