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ハードロックナットはなぜゆるまないのか?

2020.09.17

ねじのゆるみとは

なぜねじはゆるむのか?

 

ねじ締結体は、ねじの締付けによってボルト軸部に発生した引張力(ボルト軸力という)と被締結部材に発生した圧縮力(締付力という)とにより一体化されています。このねじ締結体に外力が作用していないときは、ボルト軸力と締付力とは互いに釣り合っており、この状態における両者を総称して「予張力」といいます。

締付け直後に発生した予張力は、何らかの原因で低下することがあります。このような予張力の低下を「ねじのゆるみ」といいます。

「ねじのゆるみ」には、大きく分けて、ナットが回転しないで生じるゆるみと、ナットが回転して生じるゆるみの2種類があります。

ナットが回転しないで生じるゆるみは、どのナットであっても発生する現象であり、例えハードロックナットであっても単体では防止できません。一方、ナットが回転して生じるゆるみについては、「軸回り方向繰り返し外力によるゆるみ」「軸方向繰り返し外力によるゆるみ」「軸直角方向繰り返し外力によるゆるみ」の3種類があります。この対策として世界中で様々なゆるみ止め部品が存在します。

 

ゆるみ止め部品には以下の機能が1つまたは複数が必要です。

1.へたり等の永久変形の影響をばね作用で補償

2.ねじ部で相対変位に対する抵抗を増して戻り回転を防止

3.座面部で相対変位に対する抵抗を増して戻り回転を防止

 

上記の機能を満たすゆるみ止めの方式としては以下のものが知られています。

1.ばね性座金方式(初期ゆるみ対策)

2.プリべリングトルク形(軸力消失防止)

3.フリースピニング形(軸力消失防止)

4.機械的回り止め方式(軸力消失防止)

5.リード差利用方式(軸力消失防止)

6.ねじ部密着増加方式(軸力消失防止)

7.ダブルナット方式(戻り回転防止)

8.接着剤使用方式(戻り回転防止)

 

この中でも、7と8はナットが回転して生じるゆるみに対しては有効性があります。どちらも、ボルトとナットのねじのはめあい隙間(遊間、ガタ)を除く方法をとっておりますが、ダブルナット方式にしても、正確な羽交い絞めをしていかなければ、ねじのガタを完全になくすことは困難ですし、接着剤使用方式でも様々な箇所で完全に使えるわけではありません。

そこで、ボルトとナットの遊間を簡単に除く画期的な方法がハードロックナットによる強制ロッキング方式となります。

 

ハードロックはなぜゆるまないのか?

当製品のロッキング構造は、古くから木造建築で使われている「クサビ」を利用しています。当社ではこの「クサビ」の原理をナットに応用し、ねじの遊間を完全に排除した商品を開発しました。その画期的な商品がハードロックナットなのです。

下図のようにボルトとナットの隙間にクサビを打ち込むことができれば、クサビを打ち込んだ側と反対側のボルト・ナットのねじのはめあい隙間は、それぞれ押し付けられ隙間が除去され、お互いのねじ部の摩擦抵抗が増大し、ボルトとナットが一体化するようになります。

ただし、ボルトにクサビを入れるスペースが必要なこと、クサビを打込む道具が別途必要なこと、ナットのねじ面がクサビにより破壊されることなど、実用化するにはかなり構造的に無理がありました。しかしクサビ方式は強力なゆるみ止めが実現できることから研究を重ね、第2ナットにクサビを打込むハンマーの機能をもたせ、さらに第2ナットとクサビを一体化するためにナットの中心軸を偏芯させた円錐上の凸部を設ける発想にたどり着きました。同時に第1ナットにクサビを受ける凹部を設けることでボルトへの加工を必要としない画期的なゆるみ止め機構が完成しました。

 

 

ハードロックナットは、凹凸2種類のナットで構成されています。

凸ナット①はねじ軸からaだけ偏芯加工した円錐面を設けています。一方凹ナット②はねじ軸に真円加工した円錐面をもつ構造になっています。ボルトに凸ナットを締込み、続いて凹ナットを締め込むことで凹ナットとボルトの間に凸ナットの偏芯した円錐面があたかもクサビを打込むように侵入し、ナットのねじ面をボルトのねじ面に押し付けることでクサビの原理による強力なロック効果を力学的に発生させます。

 

ハードロックナットは凸凹ナットを締め込むことで凸ナット①とボルトのねじ面を押し付けると同時に凹ナット②とボルトねじ面を押し付けます。ねじ面の押し付けにより摩擦抵抗が増大し強力なゆるみ止め効果を発揮します。

 

この偏芯構造は凸ナット①が凹ナット②のロックを行い、凹ナット②が凸ナット①のロックを行うという、言わば相互にロックを行う効果を有します。この為ボルト軸力に関係なくゆるみ止め効果を発揮させることが可能です。したがって、ハードロックナットはボルト軸力を高くすることが困難な木材やプラスチックといった部材への締結にも優れたゆるみ止め効果を発揮させることができます。

また、先に締め付ける凸ナットはお客様の設定した軸力で締め付け、相互ロックのために締め付ける凹ナットは当社推奨のトルクで締め付けることで緩み止めを行うという機能分離を実現します。

このため、凸ナット、凹ナットそれぞれは螺入の際に普通のナットと同様に螺入でき、凸凹ナットの円錐面が摺動した状態で締込むことでお互いのロッキングが始まります。

当社では凹ナット締付けの際のボルト軸力変化を抑制するように円錐部分の形状を設計することで安定なボルト軸力管理を提供しております。そのため、特殊な状況でない限り凹ナットによるロッキングの際に凸ナットを保持する必要がなく、単純に凸ナット⇒凹ナットの順番で締め込むことでゆるみ止めを実現できます。

また凸ナット①にクサビ構造を持たせることで、クサビを引き抜くことが可能になりナットの再使用が可能になりました。

ハードロックナットは偏芯させた円錐構造により機能を実現しているため、ナットの素材や表面処理に対する制約が少なく、広範囲の条件、環境で使用いただけます。

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