お問い合わせ

クリープ破壊

2022.07.07

クリープ破壊とは

材料を高温で一定荷重(応力)の状態に保ち続けると、時間とともに塑性変形が進行し、最終的に破断破壊に至ります。この変形をクリープ変形といい、クリープ変形の進行で破断することをクリープ破壊といいます。金属材料では融点(絶対温度K)の1/2を超えるとクリープが発生します。従って、鋼材のボルトではおよそ600℃以上の使用温度環境ではクリープ破壊の懸念があります。例えば、火力発電設備分野の部材ではクリープ変形と破壊が寿命を支配することになります。

 

クリープ破壊のメカニズム

金属は融点(絶対温度K)の1/2以上の高温で一定荷重が作用すると、図1に示すように時間とともにひずみが次第に増加していきます。この現象がクリープ変形で、弾性限度以内の小さな応力でも発生し、最終的に破壊に至ります。鋼材ではおよそ600℃以上で起こり得ます。クリープ現象は、クリープ速度が温度に依存する熱活性化過程です。遷移クリープでは熱によって転位の移動が活発になり、応力集中部分に転位が集積して硬化が起こります。定常クリープでは集積転位が再配置して軟化する現象も起こって、硬化と軟化がバランスした状態になります。加速クリープでは軟化が進行してひずみ速度が増加し破断に至ります。

 

図1 クリープ曲線

図1 クリープ曲線

 

クリープの発生過程は粒内クリープ変形と粒界すべりによる粒界三重点でのくさび型き裂発生(図2 (a))、あるいは空孔の生成拡散によるキャビティの発生(図2 (b))に大別されます。最終的には粒界割れに至ります。

 

図2 クリープによる粒界破壊モード

図2 クリープによる粒界破壊モード

 

 

クリープ破壊の破面

クリープ破断におけるマクロ破面は粒界から塑性変形を伴って割れることから分類的には延性破壊となります。マクロ破面観察だけでは破壊原因がクリープと判断するのは困難です。ミクロ破面は粒界割れ破面になります。この場合、割れ破面上に多数のディンプルが観察され、クリープに特徴的な破面模様になります。従って、ミクロ破面観察によってクリープ破壊であるかどうかの判断は比較的容易になります(図3参照)。

 

図3 クリープ破壊におけるミクロ破面の特徴

図3 クリープ破壊におけるミクロ破面の特徴

 

 

クリープ破壊の事例と対策

ボルトのクリープ破壊の報告事例は少ないですが、高温ボルトでは設計段階でクリープ破壊に対する対策が必要です。クリープが懸念される高温環境下で使用する場合は、同一材料について高温の特定温度における等温クリープ破断曲線を用意して寿命予測することが必要です。等温クリープ破断曲線とは縦軸が負荷応力、横軸がクリープ破断時間(対数)を示した図です。これをもとに温度と応力をX, Y軸として破断時間をパラメータとした線図も作成できます。
クリープ試験は非常に長い試験時間がかかります。そこで、温度を上げたり応力を上げたりして加速試験を行うようにします。このデータをもとにラーソンミラー法によるマスター破断曲線を作成することができます。マスター破断曲線ではX軸にラーソンミラー(Larson Miller)パラメータ[T:絶対温度、C:パラメータ定数、t:破断時間としてラーソンミラーパラメータ:T(C+log t)]を取り、Y軸に負荷応力を取ります。一本の曲線になるように統計的に最適化することでCが求められます。そして同一鋼材毎に一本の曲線が得られることになります。マスター曲線を基に、低温かつ長時間における強度と寿命を外挿することができます。
なお、ねじ締結体では顕著なクリープが発生しない温度域、例えば鋼材では400℃程度であってもわずかなクリープによってボルトがゆるむ可能性があります。締結力不足となって思わぬ折損に繋がる懸念があります。
また、400℃まで引張強さが殆ど低下しない鋼材として高温用合金鋼ボルト材SNB材があります。400℃近い高温で使用する場合はSNB7またはSNB16といったSNB材のボルトが有効です。

 


クリープ破壊を含めたねじの破壊にまつわるトラブルにつきましては、ねじ締結技術ナビ お役立ち資料の「ねじ締結体のトラブル原因と対策 ーねじの破壊概要編ー」(リンクはこちら)にてまとめられておりますので、是非ダウンロードください。

ねじ締結にお悩みの方はお気軽に
ご相談ください

ねじのゆるみでお困りの方は、下のボタンをクリックしお気軽にご相談ください。

相談・問い合わせをする

ハードロック工業の製品情報やCADデータなどは公式ホームページでご覧いただけます。