転がり軸受用ロックナット(以下、ロックナットという)は転がり軸受(ベアリング)が抜けないように固定するナットです。また、ロックナットと一緒に使う部品として転がり軸受用座金(以下、座金という)と転がり軸受用止め金(以下、止め金という)もあります。このコンテンツではこれらのロックナット、座金、止め金を紹介します。
〇規格について
表1に示すように規格化されています。JIS B 1554にはロックナット、座金及び止め金の種類と各部の寸法、製品仕様が規定されています。
表1 関連規格
〇種類
ロックナットの種類は4切欠き形ロックナットと8切欠き形ロックナットの2種類です。ねじのピッチはロックナット用の細目ねじが規定されています。ロックナットと座金及び止め金の組合せを表2に示します。
表2 ロックナットと固定具の組合せ
4切欠き形ロックナット
4切欠き形ロックナットは外周部の軸方向に4か所の切欠きをもつロックナットです。図1に形状を示します。各部の寸法はJIS B 1554を参照してください。ねじの基準山形と公差については、一般用メートルねじはJIS B 0205とJIS B 0209、メートル台形ねじはJIS B 0216とJIS B 0217をそれぞれ参照してください。
4切欠き形ロックナットにはAN、ANL、HN、HNLの4つの系列があります。ANが一般用メートルねじ、HNがメートル台形ねじ、Lが左ねじを表しています。AN、HNに比べてANL、HNLは座面径d1と外径d2が小さくなっております。
AN、HNは呼び径dが10–1120まで、ANL、HNLは呼び径120–1120が規定されています。表3に各系統の呼び径とねじの種類の関係を示します。
表3 各系列の呼び径とねじの種類の関係 単位 [mm]
座金
4切欠き形ロックナットは通常、座金とともに使用します。この座金は直舌付き座金であり、図2(a)に示す形状をしています。各部の寸法はJIS B 1554を参照してください。
座金にはAW、AWLの2つの系列があります。AWに比べてAWLは歯底直径d4と外径d5が小さくなっております。
規定されている内径d3の範囲と適合するロックナットの系列を表3に示します。
また、JIS B 1554 附属書Aには曲げ舌付座金が規定されています。曲げ舌付座金の形状を図2(b)に示します。
表4 各系列の内径とロックナットの系列の関係 単位 [mm]
8切欠き形ロックナット
8切欠き形ロックナットは外周部の軸方向に8か所の切欠きをもつロックナットです。図3に形状を示します。8切欠き形ロックナットは座面に止め金装着用のねじ穴があるため、4切欠き形ロックナットに比べて座面の面積が広くなっています。
8切欠き形ロックナットにはAN、ANLの2つの系列があります。Lが左ねじを表しています。ANに比べてANLは座面径d1と外径d2が小さくなっております。同じ呼び径で比較すると、ANに比べてANLは座面の面積が狭くなっています。各部の寸法はJIS B 1554を参照してください。ねじの基準山形と公差については、一般用メートルねじはJIS B 0205とJIS B 0209、メートル台形ねじはJIS B 0216とJIS B 0217をそれぞれ参照してください。
ANは呼び径dが220–1060まで、ANLは呼び径220–1120が規定されています。表5に各系統の呼び径とねじの種類の関係を示します。
表5 各系列の呼び径とねじの種類の関係 単位 [mm]
止め金及び適用するボルト
8切欠き形ロックナットは通常、止め金及び適用するボルトとともに使用します。図4に示す形状をしています。各部の寸法はJIS B 1554を参照してください。
止め金にはAL、ALLの2つの系列があります。8切欠き形ロックナットとの組み合わせにつきましては、表6に示しています。ANに比べてANLは座面の面積が狭くなっているため、同じ呼び番号でもeとd6の寸法が異なっています。
表6 止め金と適合するロックナットの系列
参考文献
日本産業規格 JIS B 1554: 2016「転がり軸受-ロックナット,座金及び止め金」(JIS規格はJIS検索より内容の閲覧が可能です)