動力の伝達手段としてベルトや歯車等多くの手法が存在します。動力発生源の多くが軸の回転トルクを介して伝達手段を動かしている(例えば、電動機の回転軸に取り付けたプーリーでベルトを動かし動力を伝達、等)ことから、これら動力伝達系については①「軸にトルクを与える動力源」、②「軸トルクと回転体の回転力との変換」、さらに③「回転体の回転力を別の場所に伝達する手段(ベルトや歯車)」、④軸の回転がぶれないように「軸を支持する構造」、が必要です。①の動力源(電動機、エンジン、等)と③の伝達手段(ベルト、歯車、等)については「ねじ締結技術ナビ」の範疇から外れるため省略いたします。また④の「軸を支持する構造」については別記事を参照ください。
②の「軸トルクと回転体の回転力との変換」について、構成物として軸、回転体、以外に「トルクの伝達手段(平行キー等)」と「軸と回転体の位置固定手段」が必要です。例えば図1のようにキー溝とねじを有する軸、平行キー、回転体でトルクを伝達し、ナットで回転体の軸方向移動を防止する等の方法がとられます。回転体の位置固定手法として、回転体を軸に「しまりばめ」を行い、軸と回転体間の摩擦力で動力(トルク)を伝達する場合もあります。回転体の軸方向移動を防止する手段としていくつか紹介します。

図1 回転軸と回転体
止めねじ
回転体にラジアル方向のねじ穴を設け、止めねじで軸と回転体の押圧を増し、軸と回転体間の摩擦力で回転体の軸方向移動を防止します。動作中の振動などで止めねじが緩むことがあり、止めねじのゆるみ止めが別途必要です。止めねじによる摩擦力だけでのトルク伝達には限界があり、高トルクの伝達は別途平行キーなどの手段が必要です。同様に、回転体の軸方向移動についても止めねじによる摩擦力だけでは抑制できない場合があります。回転体と回転軸のはめあいにはすき間(遊び)が必要であり、止めねじによる固定で偏重心を生じるため、高速回転には向きません。

図2 止めねじ
エンドプレート
軸端にエンドプレートを設け、回転体の軸方向からの抜けを防止します。トルク伝達は平行キーなどの手段が必要です。回転体による軸方向の力によってはエンドプレート、若しくはエンドプレート固定要素(ボルト、等)が破損(含 疲労破壊)する場合があります。回転体と回転軸のはめあいにはすき間(遊び)が存在し、エンドプレートだけでは回転体中心軸と回転体回転中心にずれが生じ振動が発生する可能性があります。

図3 エンドプレート
ねじ固定
軸に施したねじで回転体を固定し軸方向移動を防止する方法です。軸にめねじを設けボルト締結する場合と、軸におねじを設けナット締結する場合があります。ねじ固定だけで伝達できるトルクには限界があり、平行キーなどによるトルク伝達構造が必要です。しかし、正逆反転回転など動作状況によっては、固定ねじがゆるむ可能性があります。テーパー状のインロー構造を用いることで回転体中心軸と回転中心軸を一致させることが可能になり、高速回転には適した方法です。なお、平行キーと同様のトルク伝達構造として、ラジアル方向の穴+ノックピンもありますが、伝達トルクがノックピンへのせん断力となるため使用には注意が必要です。

図4 ロックナット
以下の技術資料もあわせてご覧ください。