ボルトを適切に締付けることは極めて重要です。締付け方法はいくつかありますが、この技術コンテンツでは、張力法についても簡単に説明します。また、この方法の詳細についてはねじ締結技術ナビ技術寄稿にもまとめられております。あわせてご覧ください。
張力法
張力法は油圧テンショナーと呼ばれる専用装置を用いてボルトに直接張力を与えて締付ける方法です(図1)。油圧テンショナーを装着し、油圧によってボルトを引っ張った状態でナットを締付け、油圧を除去するとボルトに軸力が発生します。トルク法とは異なり、接触面の摩擦係数の影響をほとんど受けない特徴があります。軸力の誤差を数%以内に管理できると言われており、高い締付け精度が要求される締結部(例えば、原子力関連機器、化学プラント及び大型内燃機関の重要部品)に使用されています。その一方で、締付け装置が高価であり、対象となるねじ部品の周りに油圧テンショナーを設置するためのスペースが必要となるため、複数のボルトを狭い間隔で配置する締結部には適用できません。また、締結部が薄板の場合、あるいは被締結体の中に剛性が低く、圧縮特性の評価が困難なガスケットなどを含む場合、締付け精度が著しく低下することがあります。さらに、締付け作業の最初にボルトに与える張力が目標軸力より高いので、ボルト軸応力を降伏点近くに設定している場合は注意を要します。
以下の技術資料、コンテンツもあわせてご覧ください。
- ねじ締結の原理と締結信頼性の向上(その③:塑性域締結法および張力法について)
- 弾性域締付けと塑性域締付け(ボルトの締付け方法)
- トルク法(ボルトの締付け方法)
- 回転角(度)法(ボルトの締付け方法)
- トルク勾配法(ボルトの締付け方法)
- 熱膨張法(ボルトの締付け方法)
- 適切なねじの締付け(ゆるみの把握の基礎知識)
- トルク・軸力管理とは?(ゆるみの把握の基礎知識)
参考文献
- 福岡俊道:技術者のためのねじの力学―材料力学と数値解析で解き明かす―,コロナ社(2015),pp. 73-125