トルク法における締付けトルクのばらつき
トルク法は、簡便で広く使われているねじ締結手法となっておりますが、トルクのばらつきが大きいという注意点があります。例えば、50 N·mで多数本のボルトを締付けていったときに、実際はどのぐらいトルクの値がばらついてしまうのでしょうか? 今回、この技術寄稿におきまして、ヒューマンエラーによってどれぐらい締付けトルク値がばらつくのかを計算いたしました。
計算にあたり、考慮した誤差は以下の通りとなります。
①着力点位置のずれ:±5%(図2)
②トルクを与える力の作用方向のずれ:直角方向±15°、水平方向±15°(図3)
③工具のばらつき:最大6%(JIS B 4652: 2018)

図1 トルクレンチでの締付け作業姿勢

図2 着力点位置の誤差

図3 締付け作業方向の誤差
詳細な計算過程は先の技術寄稿をご覧ください。計算の結果、トータルの誤差率(すべての誤差が最大となった場合)は10.3%になり、それを3σととらえると、90%信頼限界値(1.645σ)は4.3%となりました。先の例によると、すなわち50 N·mで多数本のボルトを締付けていったときには、上記3種類の誤差だけでも50×0.043≒2.2(N·m)程度のばらつきは容易に生じてしまうことになります。
また、この解析結果では、考慮しきれていない誤差などは含まれておらず小さな値となっておりますが、実際には、この3つの誤差以外にも誤差が存在し、誤差がより大きくなったり、工具の管理状況、作業者の目線の方向のずれなどが加わるとばらつきは大きくなることが考えられます。事実、簡単な締付け試験を3人で実施し、ばらつきを計測したところ、10.0%と大きい値となりました。したがって、締付けトルクのばらつきには注意が必要です。
詳しくは、技術寄稿「トルク法におけるボルト締付けトルクのばらつきについて」(締付け作業に与える工具・ヒューマンエラーなどの影響)をご覧ください。また、下記の技術資料、コンテンツもご参考ください。